血液ガスの読み方を5ステップで整理|呼吸療法認定士の血ガス対策

こんにちは。学び舎編集部です。
血液ガス分析の結果を見て、
- 数字が多くて、どこから読めばよいかわからない
- pH・PaCO2・HCO3−の関係が混乱する
- 代償が入ると急にわからなくなる
- 呼吸性と代謝性を毎回逆にしてしまう
と感じる人は少なくありません。
血液ガスは、すべての数値を同時に理解しようとするより、決まった順番で一つずつ確認するほうが整理しやすくなります。
この記事では、呼吸療法認定士試験の学習を想定し、公式テキストで採用されている「Step by Step法」に沿って、血液ガスの読み方を次の5ステップに分けて解説します。
- pHを見る(アシデミアかアルカレミアか)
- PaCO2を見る(呼吸性か代謝性か)
- 代償が適切か確認する
- アニオンギャップを計算する
- 補正HCO3−を計算する
血液ガスの解釈は、酸素療法・呼吸不全・人工呼吸管理を理解するうえでも土台になる分野です。ここを先に固めておくと、その後の学習が進めやすくなります。
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血液ガス分析では何がわかる?
血液ガス分析で評価できるのは、次の3つです。
- 酸素化:PaO2 で評価する
- 換気:PaCO2 で評価する
- 酸塩基平衡:pH・PaCO2・HCO3− で評価する
まず覚えたい基準値は?
成人の動脈血液ガスの基準値です。
| 項目 | 単位 | 基準値 |
|---|---|---|
| pH | — | 7.35〜7.45 |
| PaO2 | mmHg | 60〜100(室内気) |
| PaCO2 | mmHg | 35〜45 |
| HCO3− | mEq/L | 22〜26 |
| SaO2 | % | 95〜99 |
| BE(塩基過剰) | mmol/L | 0±2 程度 |
| Na+ | mEq/L | 138〜145 |
| K+ | mEq/L | 3.6〜4.8 |
| Cl− | mEq/L | 101〜108 |
| Lactate(乳酸) | mmol/L | 1.33以下 |
血液ガス分析装置の画面では、pH・PaO2・PaCO2・Na+・K+・Cl−などが実測値、HCO3−やBEは計算値として表示されます。
なお、基準範囲は測定機器や施設によって異なります。また、PaO2は年齢、吸入酸素濃度、標高の影響を受けます。試験問題では、問題文に示された基準や条件を優先してください。
血液ガスはどの順番で読めばよい?
次の順番で読むと整理しやすくなります。
pH → PaCO2 → 代償 → アニオンギャップ → 補正HCO3−
いきなり病名や原因を考えるのではなく、まず数値から酸塩基平衡異常を分類します。
ステップ1:pHは酸性側とアルカリ性側のどちら?
最初に見るのはpHです。
- pH 7.35未満:アシデミア(酸血症)
- pH 7.45超:アルカレミア(アルカリ血症)
- pH 7.35〜7.45:正常範囲
ここで区別しておきたいのが、「アシデミア」と「アシドーシス」です。
- アシデミア(酸血症):実際に血液のpHが低下している状態
- アシドーシス:pHを酸性側へ動かす病態(過程)
同様に、アルカレミアはpHが高い状態、アルカローシスはpHをアルカリ性側へ動かす病態を指します。
pHが正常範囲でも、PaCO2やHCO3−が異常なら、代償された酸塩基平衡異常や混合性障害が隠れていることがあります。pHが正常だからといって、そこで判定を終えてはいけません。
ステップ2:呼吸性と代謝性はどう見分ける?
PaCO2 だけを見て判断できます。
pHでアシデミアかアルカレミアかを決めたら、次はPaCO2の値だけで一次性の障害を分類します。
| pHの判定 | PaCO2 | 一次性の障害 |
|---|---|---|
| アシデミア(pH低下) | 45より高い | 呼吸性アシドーシス |
| アシデミア(pH低下) | 45より低い | 代謝性アシドーシス |
| アルカレミア(pH上昇) | 35より低い | 呼吸性アルカローシス |
| アルカレミア(pH上昇) | 35より高い | 代謝性アルカローシス |
本来はPaCO2とHCO3−の両方を比べるべきですが、pHの向きが決まっていれば、PaCO2の値だけで一次性の障害を分類できます。これがStep by Step法の大きな利点です。
4つの酸塩基平衡異常の整理
| 異常 | pH | 一次性変化 | 代償性変化 |
|---|---|---|---|
| 呼吸性アシドーシス | ↓ | PaCO2 ↑ | HCO3− ↑ |
| 呼吸性アルカローシス | ↑ | PaCO2 ↓ | HCO3− ↓ |
| 代謝性アシドーシス | ↓ | HCO3− ↓ | PaCO2 ↓ |
| 代謝性アルカローシス | ↑ | HCO3− ↑ | PaCO2 ↑ |

呼吸性アシドーシスとは?
肺胞換気が不足してCO2を十分に排出できない状態です。
- COPDなどによる換気障害
- 中枢神経抑制(麻酔薬・オピオイドなど)
- 神経筋疾患
- 気道閉塞
- 人工呼吸器の分時換気量不足
呼吸性アルカローシスとは?
過換気によってCO2を過剰に排出している状態です。
- 低酸素血症
- 疼痛・不安
- 発熱、敗血症
- 肺血栓塞栓症
- 妊娠、肝硬変
- 人工呼吸器による過換気
代謝性アシドーシスとは?
酸の増加、またはHCO3−の喪失によって起こります。
- 乳酸アシドーシス
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 腎機能低下(尿毒症)
- 下痢によるHCO3−喪失
- 一部の薬物や中毒
代謝性アルカローシスとは?
酸の喪失、またはHCO3−の増加によって起こります。
- 嘔吐、胃液(胃管)からの喪失
- ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬
- 低カリウム血症
- 高アルドステロン状態
ステップ3:代償が適切かどうかはどう判断する?
代償とは、一次性の酸塩基平衡異常を、呼吸または腎臓が打ち消そうとする反応です。
- 代謝性障害 → 呼吸が代償する(数分〜数時間で完成)
- 呼吸性障害 → 腎臓が代償する(数時間〜数日かかる)
呼吸による代償は速く、腎臓による代償は遅い。この時間差があるため、呼吸性障害では急性か慢性かでHCO3−の変化量が異なります。
代償の計算式
代償の計算式は、正常値からどれだけ動くか(Δ=変化量) で考えます。
| 酸塩基平衡異常 | 代償式 | 限界値 |
|---|---|---|
| 急性 呼吸性アシドーシス | ΔHCO3− = 0.1 ×(PaCO2 − 40) | 30 mEq/L |
| 慢性 呼吸性アシドーシス | ΔHCO3− = 0.3 ×(PaCO2 − 40) | 45 mEq/L |
| 呼吸性アルカローシス | ΔHCO3− = 0.2 ×(40 − PaCO2) | 16 mEq/L |
| 代謝性アシドーシス | ΔPaCO2 = 1.2 ×(22 − HCO3−) | 10 mmHg |
| 代謝性アルカローシス | ΔPaCO2 = 0.7 ×(HCO3− − 22) | 65 mmHg |
使い方はシンプルです。 求めたΔを、正常値(PaCO2は40、HCO3−は24)から足し引きするだけです。
たとえば代謝性アシドーシスでHCO3−が12 mEq/Lなら、
ΔPaCO2 = 1.2 ×(22 − 12)= 12 mmHg → PaCO2 は 40 − 12 = 28 mmHg まで下がるはず
実測PaCO2がこの予測値に近ければ「適切に代償されている」、大きくずれていれば「別の酸塩基平衡異常が併存している」と考えます。
代償が起こっていれば「正常」と考えてよい?
代償があるからといって、原因となる病態が解決したわけではありません。
また、代償は一次性変化を打ち消す方向に働きますが、pHを完全に正常まで戻しきることは通常ありません。反対側へ過剰に振り切ることもありません。
実測値が予測される代償範囲から外れている場合は、2つ以上の一次性障害が同時に存在する混合性障害を考えます。
ステップ4:アニオンギャップはどう計算する?
代謝性アシドーシスと判定したら、アニオンギャップ(AG)を計算します。
AG =(Na+ + K+)−(Cl− + HCO3−)
正常値:12 ± 2 mEq/L
アニオンギャップが開大しているときは?
測定されない酸(有機酸など)が体内に増えている可能性を考えます。
覚え方は KUSSMAUL です。
| 頭文字 | 原因 |
|---|---|
| K | Ketoacidosis(ケトアシドーシス) |
| U | Uremia(尿毒症) |
| S | Sepsis(敗血症) |
| S | Salicylic acid(サリチル酸) |
| M | Methanol(メタノール中毒) |
| A | Aspirin(アスピリン中毒) |
| L | Lactate(乳酸) |
アニオンギャップが正常のときは?
HCO3−の低下をCl−が補うため、高クロール性代謝性アシドーシスになります。
覚え方は HARDUP です。
| 頭文字 | 原因 |
|---|---|
| H | Hyperalimentation(過栄養) |
| A | Acetazolamide(アセタゾラミド) |
| R | Renal Tubular Acidosis(尿細管アシドーシス) |
| D | Diarrhea(下痢) |
| U | Ureterosigmoidostomy(尿管S状結腸瘻) |
| P | Parenteral Saline(生理食塩液の大量輸液) |
低アルブミン血症では補正が必要
アルブミンは陰イオンとして働くため、低アルブミン血症ではアニオンギャップが低く算出されます。
見逃しを防ぐため、アルブミンが1 g/dL低下するごとに、アニオンギャップに約2.5 mEq/Lを加算して補正します。
ステップ5:補正HCO3−で「隠れた異常」を見つける
アニオンギャップが開大していたら、さらに補正HCO3−を計算します。
補正HCO3− = 実測HCO3− +(AG − 12)
これは「蓄積した有機酸が中和されたと仮定したときの、理論上のHCO3−」です。この値を基準値(22〜26)と比べます。
| 補正HCO3− | 判定 |
|---|---|
| 22未満 | HCO3−の喪失(AG正常型の代謝性アシドーシス)も合併している |
| 22〜26 | ほかの代謝性異常の合併は考えにくい |
| 26超 | 代謝性アルカローシスも合併している |
このステップを踏むと、AG開大型のアシドーシスに隠れた「もう1つの異常」を見つけられます。試験でも臨床でも、差がつくポイントです。
酸素化はどう評価する?
PaO2は動脈血中の酸素分圧で、酸素化の状態を評価します。ただし、PaO2は数値だけを見て判断できません。
- 室内気か酸素投与中か
- FIO2(吸入酸素濃度)はいくつか
- 人工呼吸器を使用しているか
- 年齢
酸素投与中はPaO2が正常範囲に見えても、投与されているFIO2に対して不十分なことがあります。
低酸素血症と呼吸不全の定義は?
- 低酸素血症:室内気で PaO2 が 60 mmHg 未満
- 呼吸不全:動脈血酸素分圧が 60 mmHg 以下になる病態
呼吸不全は、PaCO2の値で2つに分類します。
| 分類 | PaO2 | PaCO2 | 主な問題 |
|---|---|---|---|
| I型呼吸不全 | 60 mmHg以下 | 45 mmHg以下 | 酸素化障害 |
| II型呼吸不全 | 60 mmHg以下 | 45 mmHg超 | 肺胞換気障害 |
酸素投与中はPaO2が見かけ上保たれることがあるため、酸素投与条件を確認せずに分類しないことが重要です。
低酸素血症の原因は5つ
- 吸気酸素分圧の低下(高地など)
- 肺胞低換気
- 換気血流比不均衡(V/Qミスマッチ)
- シャント
- 拡散障害
このうち ①と②ではA-aDO2(肺胞気動脈血酸素分圧較差)は開大しません。逆に、③④⑤ではA-aDO2が開大します。
A-aDO2 ≒ 150 − PaO2 − 1.25 × PaCO2(室内気・海水面)
標準値は5〜15 mmHg程度で、加齢とともに増加します(年齢補正の目安は「年齢/4 + 4」)。20 mmHg以上は全年齢で異常とされます。
実際の血液ガスを読んでみよう
例題1:pH 7.28、PaCO2 60、HCO3− 27
Step1(pH):7.28 < 7.35 → アシデミア
Step2(PaCO2):60 > 45 → 呼吸性アシドーシス
Step3(代償):急性なら ΔHCO3− = 0.1 ×(60 − 40)= 2 → 予測HCO3− = 24 + 2 = 26 mEq/L
実測は27 mEq/Lで、予測値とほぼ一致します。
判定:適切に代償された、急性の呼吸性アシドーシス
もし慢性なら ΔHCO3− = 0.3 ×(60 − 40)= 6 → 予測30 mEq/L となるはずで、実測27とは合いません。
例題2:pH 7.25、PaCO2 26、HCO3− 11、Na+ 140、K+ 4.0、Cl− 109
Step1(pH):7.25 < 7.35 → アシデミア
Step2(PaCO2):26 < 45 → 代謝性アシドーシス
Step3(代償): ΔPaCO2 = 1.2 ×(22 − 11)= 13.2 → 予測PaCO2 = 40 − 13.2 = 約27 mmHg
実測26 mmHgなので、呼吸性代償は適切です。
Step4(アニオンギャップ): AG =(140 + 4.0)−(109 + 11)= 144 − 120 = 24 mEq/L → 開大
Step5(補正HCO3−): 補正HCO3− = 11 +(24 − 12)= 23 mEq/L → 基準範囲内
判定:呼吸性代償を伴う、アニオンギャップ開大型の代謝性アシドーシス。ほかの代謝性異常の合併は考えにくい。
ここから、乳酸やケトン体など「測定されない酸」の原因を探しにいきます。
例題3:pH 7.10、PaCO2 60、HCO3− 18
Step1(pH):7.10 < 7.35 → アシデミア
Step2(PaCO2):60 > 45 → 呼吸性アシドーシス
Step3(代償):急性なら ΔHCO3− = 0.1 ×(60 − 40)= 2 → 予測HCO3− = 24 + 2 = 26 mEq/L
しかし実測は18 mEq/L。予測より大幅に低い。
代償ならHCO3−は「上がる」はずなのに、実際には下がっています。つまり、HCO3−を下げる別の病態が働いています。
判定:呼吸性アシドーシスと代謝性アシドーシスの混合性障害
血液ガスで間違えやすいポイントは?
PaCO2だけで呼吸性と決めない
PaCO2が低いからといって、必ず呼吸性アルカローシスとは限りません。先にpHを見ることが絶対条件です。
pHが正常でも異常なしとは限らない
pHが正常範囲でも、PaCO2とHCO3−の両方が異常なら、代償された単純性障害か、打ち消し合う混合性障害の可能性があります。
HCO3−は計算値であることが多い
血液ガス分析装置に表示されるHCO3−は、pHとPaCO2から計算して求められる値です(実測値ではありません)。生化学検査の値と大きな差がある場合は、検体条件や測定方法も考慮します。
検体・測定条件の「落とし穴」
- 放置:プラスチックシリンジはガス透過性があり、時間が経つとPaO2・PaCO2が変化する
- 白血球高値:白血球が酸素を消費し、偽性低酸素血症を示すことがある
- 体温:血液は1℃低下するごとにpHが約0.015上昇する。装置は37℃で測定するため、低体温患者では生体内より高い分圧が表示される
- 妊娠・肝硬変:過換気となり、呼吸性アルカレミアがみられる
呼吸療法認定士の血液ガス対策はどう進める?
血液ガスは、解説を読むだけでは身につきにくい分野です。次の順番で学習すると、知識を問題に使いやすくなります。
1.4つの基本パターンを覚える
まずは呼吸性/代謝性 × アシドーシス/アルカローシスの4つを、pHとPaCO2の組み合わせで即答できるようにします。
2.毎回同じ順番で読む
pH → PaCO2 → 代償 → AG → 補正HCO3−。問題によって順番を変えないことが重要です。
3.代償は「方向」から覚える
計算式を暗記する前に、どちらへ動くかを理解します。
- 代謝性アシドーシス → PaCO2は低下
- 代謝性アルカローシス → PaCO2は上昇
- 呼吸性アシドーシス → HCO3−は上昇
- 呼吸性アルカローシス → HCO3−は低下
方向が理解できたら、Δの計算式へ進みます。
4.間違えた問題を繰り返す
血液ガスは、一度正解しただけでは読み方が身についたとは限りません。数値の組み合わせを変えた問題を繰り返し、手順を自動化することが重要です。
コメディカルの学び舎では、公式テキスト準拠のオリジナル予想問題をスマホで解けます。気になった問題はブックマークに残し、分野別の弱点分析で「どこが弱いか」を見ながら学習を進められます。
まとめ:血液ガスは5ステップで順番に読む
- pHでアシデミア・アルカレミアを確認する
- PaCO2だけを見て、呼吸性か代謝性かを決める
- Δの式で代償が適切かを確認する
- 代謝性アシドーシスならアニオンギャップを計算する
- AGが開大していれば補正HCO3−で隠れた異常を探す
最初からすべての計算式を覚える必要はありません。まずは、pHとPaCO2の2項目から4つの基本的な酸塩基平衡異常を判定できるようにしましょう。
その後、代償、アニオンギャップ、補正HCO3−へ進むと、知識を段階的に積み上げられます。
登録不要で無料問題を試せるため、まずは実際の数値を見ながら、5ステップで判定する練習から始めてみてください。
※本記事は、呼吸療法認定士の公式テキストおよび一般的な呼吸生理・酸塩基平衡の知識にもとづく学習用の解説です。基準値・代償の予測式・アニオンギャップの計算式は、測定機器・施設・成書によって幅があります。実際の臨床判断では、病歴、身体所見、酸素投与条件、採血条件、電解質、乳酸値などを含めて総合的に評価してください。